『金持ち父さん貧乏父さん』で有名なロバート・キヨサキは、「ドルはもう終わりだと確信しており、人々は現在銀行に預けている資金を守るために急速に対策を講じる必要がある」と述べたという。キヨサキは、銀行危機はまだ始まったばかりだと断言している。経済危機が迫っていると警告し、その対策として、ゴールド、シルバー、ビットコインへの投資を行っている。
ロシアのウクライナ侵攻は、米国が中央銀行の準備金を制裁する意思があることを示した。米国が<ドルを武器化>する用意があることを示した今、FRB(米連邦準備制度理事会)や欧米の銀行、その他の取引先が保有するドル準備は、政治的に没収されかねないということである。
ドルに代わる魅力的な通貨として、暗号通貨や中央銀行のデジタル通貨、あるいは特定の国や地域の競争優位性を表す商品バスケットなどが議論されている。
ニューデリーで開催されたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの協力関係強化に焦点を当てた会議は、まさにこのようなプランに触れた。このような通貨秩序のバリエーションは「ブレトンウッズ3」と呼ばれている。
もちろん、ドルの基軸通貨としての権威がただちに崩壊するわけではない。1944年のブレトンウッズ会議以来、ドルは国家間の国際貿易収支の決済に使われる唯一の通貨であった。しかし、訪中したマクロン仏大統領は、米国から離れた「戦略的自治」を構築するというメッセージを、習近平(シー・ジンピン)との中国訪問時に声高に主張し、ワシントンを落胆させた。欧州の一部の人々は、ワシントンによるドルの「武器化」に不満を漏らしており、欧州でも米国離れの動きが始まった。「米国の追従者」になるだけでなく、「自分たちのものではない危機に巻き込まれないように」というマクロンの呼びかけは、欧州の指導者たちにも受け入れられているようだ。
ドルの優位性を武器にした米国のおごりから始まった脱・ドル化の流れだが、1971年のニクソンによる金兌換(だかん)の停止は、歴史の全ての通貨制度と同様にドルの終焉(しゅうえん)を迎えることを告げるものだった。バイデン政権が破壊したペトロダラー(ドル・石油本位制)は、これから長い時間をかけて失墜していくだろう。
ブレマーの言うように、米国もドルの下落に対して指をくわえて見ているわけではない。しかし、今後のドルの防衛には米国金利の上昇が必要条件となってくる。ここで、米国の当局はかなり苦労することは間違いない。米国経済を破壊してまでペトロダラーを守ろうとするのか、それとももっと悪いこと(新たな戦争)をするのか、見ものである。
いずれにせよ、紙幣の時代は終わった。私たちの生活を支えるには、金融よりも、モノの方がはるかに重要であることがわかったからだ。
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